読むと役立つ連載コラム

鈴木税理士事務所 税理士 鈴木久美子

はじめまして大阪府堺市の税理士 鈴木久美子です。
会計事務所しか勤務したことのない税理士さんと違って、私は中小企業での経理を経験し、資金繰りの重要性を肌で感じて参りました。
中小企業では、損益(儲け)は理解できても資金との関連性には無頓着な経営者の確率が高く、そのために資金がなくなって倒産する確率も当然ですが高いです。

このコラムでは単に資金繰りのノウハウだけでなく、
経営(事業を継続すること)の視点も合わせて述べて参ります。

資金繰りを制する者は経営も制す  鈴木税理士事務所 税理士 鈴木久美子

第四回 融資を利用しない資金繰り法の考察

初期投資があまり必要でない場合は金融機関の融資を利用しなくても利益さえ出れば資金は増えると思いがちですが、納税による資金の流出という問題が出てきます。税負担は次のようになります。

一般法人の法人税・住民税・事業税

所得区分 表面税率 実効税率
年400万円以下 30.81% 29.33%
年400万円超年800万円以下 33.11% 30.84%
年800万円超 44.79% 40.86%

(注)地方税(住民税・事業税)は標準税率を使用しています。地方によって割増税率を採用している場合があります。また住民税の均等割(最低7万円)が含まれていません。実効税率とは事業税は納税したときに損金(法人税法上の費用)に算入されることを考慮した税率です。

法人税の課税所得計算は会社決算での利益に法人税法上の加算と減算を行って算出するので、会社の決算利益と必ずしも同額にはなりませんが、これが実質的に利益を出すことによる資金調達の費用といえます。この税率を見て、多くの経営者は「節税対策」と称して資金を100使って法人税等30から40下げることに熱心になります。あまりやりすぎると必要な時に支払う資金が貯まらない事態をまねきます。

また、役員報酬を多めに計上して役員個人でプールしておき、事業資金が不足するたびに「貸付」する方法で法人課税の負担を軽減している場合がありますが、この場合にも費用は発生します。社会保険料と給与の所得税・住民税です。創業したての小企業に多い手法ですが、「返済」時に利益が発生することと業績が上がらないと「返済」できないことになり、負担した社会保険料と所得税・住民税は戻って来ません。また、経営者一族が株式の90%以上保有している特殊支配同族会社は法人税の課税所得金額とオーナーの給与合計が年間1600万円を超えると給与所得控除相当額が課税対象になります。これも法人税負担が増えるので広い意味で費用といえます。(実際の計算はもっと複雑ですが、詳細な解説は省かせていただきます。)

多額の役員報酬が決算上計上されているからといっても現実に経営者の取り分になるかどうかは会社のその後の業績次第です。しかも、事情を知らない社員が増えてくると見た目の役員報酬が高額であるためモチベーションが下がり、社員が定着しなくなるリスクもあります。能力の低い社員や経験の浅い社員しかいない会社を経営者一人が走り回って支えているという構図は中小企業にはよくあるパターンです。

最後に、売上の一部を計上しなかったり、架空請求書を発行したり、人件費の水増しをして利益の圧縮を図る会社があります。現金売上はすべて計上しないという剛の者?までいます。これらは脱税行為となり、資金は経営者が秘匿します。(社員にやられることもあります。)このような不正経理は税務調査で指摘されれば3年から5年間(悪質な場合は7年間)遡って罰金や利息とともに納税させられるリスクを背負い、決算利益を圧縮したために業績が本当に悪化しても会計データが不正なため原因の特定も難しく、対策も遅れ、必要なときに金融機関から融資をも受けられない深刻なリスクをも背負うことになります。

さて、費用負担を考えればどの方法が良いと思われます?現実には中小企業のほとんどが融資依存体質です。

次回は、「第五回 備えあれば憂いなし」をお送りします。